ホタル烏賊祭り/山本 聖
 

深海のように冷えきった青い光と微かな塩味が舌の上を転がり
ひゅう、と無音に近い笛の音が
ホタル烏賊祭りの佳境を知らせる

炎は海へと還る
魂は心へと還る
闇の中で魂と魂は出会う
そして、おのおのの心の中へと還ってゆく
四つ辻で巡礼者たちは
ホタル烏賊の光を頼りに
異界から集まってきた、愛する者を探すのだ
そして年に一度の逢瀬を果たし
冷たく涙し
静かに踊り
愛しあい
この夜に感謝する

帰途
巡礼者を導く役目を終えたホタル烏賊たちは
明滅を弱め
青い炎を失い
しずかに、ひからびてゆく
肩を落としあるいは軽やか
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