酔っ払って歩道橋で叫ぶお父さんを見つめる娘の彼氏の元カノの可能性についての考察/千波 一也
地球は絶えずまわり続けて
そのうえに
わたしたちは絶えず揺れている
◆
或るおとこの背広が
夜風に揺れている
その内側では
同様にネクタイも揺れていて
さらに首を締め付けたいのか
またはそこを離れてゆきたいのか
いずれにせよ
おとこはアルコールをあおり過ぎているから
夜風の温度の適度なところを
探し
探して
息継ぎのままならないクロールさながらに階段を踏む
そのたびに
背広は揺れネクタイも揺れ
そしらぬ素振りの歩道橋がわずかに軋む
或るおんなは立ち止まる
遮断機が下りてしまったから否応なしに立ち止まる
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