夜のラッシュアワー/美味
電車と呼ばれる棺おけに
出来損ないの食べ物ばかりを並べる花屋
改札と切符の隙間から乗り込む乗客たちは
数少ない呼吸器を奪い合って窓から手を伸ばしている
躾けのなっている犬がだらしなく涎を垂れ流し
お座りをしたまま車内を徘徊している
ベストセラーの本に貪りついている鶏は
前の頁に書いてあったことは既に忘れて
空白の部分を丹念に白で塗りつぶして涙を流している
接点と接点とが擦れ合う音で
ジ、ジジ、我、ギギ、ジ、ガ、ジジジ、
ガ、ギ自、ガガ、ジジ、自、ギ、ジ我、自ガ、
の無いものたちよ
羽虫の密集する水辺に浮かぶ心臓を
電車の中に持ち込む際には
マナーモードにしていただ
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