王の退屈/知風
 
堰を切り、はしばみが丘を泥攻めにしたのだ。国王軍がズボンのすそを気にして指揮が乱れたところを確認すると、王は陣頭で剣を抜き、全軍突撃の号令をかけた。国王軍は算を乱して逐電した。騎士団長はこの失態の責任を取って帰宅すると、女中にズボンを洗濯するように言いつけて早々にベッドにもぐりこんで眠ってしまった。

 革命軍は津波のように宮殿に押し寄せた。衛兵たちはとっくに休暇を取るか、寝返って革命軍に参加していたので、革命軍は邪魔されることなく勢いのままに宮殿内になだれこんだ。それを議会の貴族の面々が笑顔で手を振って出迎えた。王はダァリィ・ダァリィ・デ・ファンダレリィ伯以下、集まった政治家たちに剣の切っ先を向け、堂々たる態度で降伏と政権譲渡を要求した。

 こうして王は革命に成功し、王座に再び返り咲いたわけだが、ちょうどその後くらいから痔の調子が悪くなり、今はもっぱら、体を動かさずに退屈をまぎらわす方法を考えながら一日を憮然として過ごしている。

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