通り雨/松本 卓也
 
天気予報は曇りだったのに
家から出て五分も経たずに
全身隈なく水浸し

コンビニに逃げ込む頃には
汗か雨だか分からない汁が
口の中に入ってくるじゃないか
いい加減にしてくれ
僕が何をやったというの

会社に辿りつく頃にゃ
雲間から差し込む眩さが
北の空でニヤニヤしてやがる

天候にまで馬鹿にされながら
人生の悲惨さが頂点に達して
喜劇に摩り替わる頃には
醒めた夢で一人笑うしかねぇ
何も僕だけが不幸じゃない

取り出したタオルで眼鏡を拭く
目の前を通り過ぎる中学生が
肩を寄せ合って歩いていった

別に羨ましくなんかないっつの

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