レモン水/カンチェルスキス
 
  




 歩道橋の真ん中に
 枯れた花束があった
 しなびて横に傾いていた
 錆びついた階段を
 とにかくのぼって
 誰かが飛び降りた





 歩道橋の下の
 アスファルトには
 何の痕跡もなかった
 曇天の空を
 映しこんだような沈黙と
 白々しさ
 いつものように
 赤信号の車を
 整列させ
 あるいは
 青信号のバスを行かせた





 果物屋の陳列された
 トマトの皮が
 外気に触れて
 乾きはじめた
 昼過ぎには暇になる
 近くのラーメン屋から
 出てきた客の向こうで
 バイトの高校生が
 店主に
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