レモン水/カンチェルスキス
歩道橋の真ん中に
枯れた花束があった
しなびて横に傾いていた
錆びついた階段を
とにかくのぼって
誰かが飛び降りた
歩道橋の下の
アスファルトには
何の痕跡もなかった
曇天の空を
映しこんだような沈黙と
白々しさ
いつものように
赤信号の車を
整列させ
あるいは
青信号のバスを行かせた
果物屋の陳列された
トマトの皮が
外気に触れて
乾きはじめた
昼過ぎには暇になる
近くのラーメン屋から
出てきた客の向こうで
バイトの高校生が
店主に
[次のページ]
戻る 編 削 Point(8)