あと八カ月/狸亭
 
ちぎって投げているオトコもいる。

歩道のハトやスズメのむれをさけて歩くのである。
来年の今頃はここを通らないせめて
この一時のほほえましい光景を愛して
記憶の底にうめておこうか。今年の夏は最後である。

高校時代の親友がひとり癌で死んでいったのである。
これから年金でももらって悠々自適の直前になって
佐藤憲幸よはやすぎたなあ。今更何をいってみたって
台風の多いむしあつい夏空はいつまでも沈黙している。

ここではないどこか別のところへとびだすべきである。
ほんとうにながい時間そんなおもいでいきてきて
世の中だんだんすさんでいくような気がして
やっぱりあと八カ月たったら楽隠居をしたいのである。

19970728


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