そして あなたの中へ/杉菜 晃
 
ても
 ぼくの姿を見つけることはできなかった

 ぼくはたまらず
 あなたに詰め寄る
 ぼくはどこにいるんだよ
 君にとって
 ぼくはどういう存在なんだよ
 と

 するとあなたは
 こんな問いかけを受けること自体が
 不当だというように
 とろんとした目色になって
 もう瞳にはシャッターが下ろされ
 何も捉えていないのだ
 瞳どころか
 あなたの顔全体がくもってしまって
 憂鬱な五月雨の風景になっている

 ぼくは分析による解明をあきらめ
 自分をむなしくすることを試みる
 だってあなたのなかに
 ぼくがまったくいないのなら
 こうするしかないから
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