『カナリヤのテルヒコ 2003』/川村 透
窓を開けてテルヒコが部屋へ入ってきた
アキヒコと名乗りわたしのベッドにもぐり込む
夜は深く闇の中で身をこわばらせるわたしの隣で眠るアキヒコ
焦げ臭さとほこりっぽさがわたしのベッドを焦がす
いかれたヤマハのバイクのエンジンはかけたままアイドリングが聞こえる外
カナリヤは驚き騒いでもわたしはカナリヤじゃない
窓が割れ窓枠もきしみ悲鳴をあげてぎしぎし言ってもわたしは窓をしめない
鳥篭が床にころがりカナリヤが窓から逃げてもわたしはカナリヤじゃない
いかれたヤマハのバイクをおりてからテルヒコはアキヒコのままテルヒコじゃない
眠るアキヒコはもうテルヒコじゃない
猫よりも丸く眠りの中
[次のページ]
戻る 編 削 Point(4)