鎖帷子のおれ、癒され過ぎ。/カンチェルスキス
 
女の都合で振り回され結局精気も金も何もかも吸い取られる。別れて前より輝きを増すのはこういう場合、いつだって女のほうだった。こいつは危険だ。だが気持ちとは反対に、おれは訊いていた。
「赤い金魚の覆面OKの店?」
 もうおれはここが電車だということをほとんど忘れていた。忘れてもよかった。
「もちろん」女は答えた。
「なら行くよ、サムゲタン」おれは答えた。
「行きましょう、サムゲタン」
 ピサの斜塔がまっすぐになっちまった。時差の関係で。そんとき。






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