スローライフ/藤原有絵
すごく好い風が家中を吹き抜けて
玄関のドア飾りが
「ちりりん、ちりりりん」
ひっきりなしに、綺麗な音で鳴ります
気温も例年より低めで
少し肌寒いくらい
部屋で本を読んでいると
いたずらに風が、私のえりあしを逆撫でるのです
遠くから小学生の元気いっぱいの声が届いて
誰かを乗せた電車が行ったり来たりして
たくさんの人が、今日も今日とて働いている
一生懸命、大事な日常を守るために
私は部屋で本を読んでいる
色々な事を想いながら
膝に頬をつけて
時々目を閉じてみる
太ももとお腹の間にも風が抜けて
すーすーする
今、鳥の声 聞えました
誰かの自転車の鍵についた、鈴の音もしましたよ
六月十五日、初夏の音
日が傾く前に、散歩に行きます
裏の池へ
その前に
溜めた湯船につかります
スローライフ
退屈という名の贅沢
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