愛想笑いの逃亡者/松本 卓也
 
今年に入って何度目かな
人生を通して数えてみれば
百を越えてはいないと思うけど

誰にも告げられないままに
疎外感に打ちのめされた偏屈を
愛想笑いで隠すだけが精一杯だった

嘯いた数の現実が一つずつ心の中で零れ
嗚咽はもう僕自身嫌になるほど繰り返し
それでも口をつく言葉は道化のそれで

誰かに期待されないで生きていけば
誰かに心を預けずに暮らせるのならば
寂しさに慣れる事だってできるはず

そう信じ続ける日々に疲れているから
抱きしめてくれる温もりを買いながら
誤魔化す日々を連綿と繰り返す

否定と拒絶を許容しながら
惰性と恐怖に脅えながら
明日を生きる為に歯を食いしばる
生産性の欠如した時間は無為に過ぎていく

今日また肋骨の隙間から軋んだ痛みが
一瞬だけ鼓動を止めたのを感じたけど
三箱目から取り出した一本に
在るがままの終焉を託していた

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