プラネタリウム/蒸発王
 
光る。

この風景を『プラネタリウム』と呼んでいる。


まるで満天の星をみるような、幾億もの蛍が飛び交うような、不思議な光景なのだ。


そしてそれを見ることができるのは、役者と着替えを手伝うために舞台裏に入る衣装さんだけ。


役者の私は、始まりの沈黙の中プラネタリウムに囲まれる。
ついに客入れが終わって本番オープニングの音響が入ると、何とも言えない気持ちになる。


役者だけに許される光景。
はけ口を出て舞台に出ればそこはもうシェイクスピアの世界がある。
その世界で『役』という人生を生きる。
タイムマシンに乗っているような感覚が身体中を震わせて、『私』を『誰か』に変化させていく。(コーデリア・フルート・マキューシオ・オフィーリア・・・・)


何故か
本当に何故か
感謝の気持ちを言いたくなる。



プラネタリウムを抜ければ
そこは夢の中へ


役者はもう一つの人生に足を踏み出す。

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