See you later, Refrigerator/山田せばすちゃん
 


萎れたる春菊一把佇んで小さき声で唄う賛美歌

一億の希望も夢も唐辛子色に染めらる明太子なり

人知れず怒りに満ちた牛乳は紙パックの内荒れ狂いたる

艶やかなデスマスクなりピーマンの眉間に深き皺刻まれて

かつてこれは茄子でありしか、ビニールの袋の中に濁りたる液

土産にと買い求めたる祖父すでに三回忌なり野沢菜茶漬け

奇妙な果実(すとれんじふるーつ)」揺れる造物主(かみ)は今不在につき伝言をどうぞ

待ちくたびれた無精卵の哀しみ賞味期限の切れた哀しみ

椎茸の木乃伊静かに眠りゐる野菜の部屋に封印をする

明日などないのは知っているけれどSee you later, Refrigerator

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