予言/下門鮎子
 
ねえ
やぶさめってなに

お馬に乗った人が
走ってるお馬の上から
矢をね
ピューッと射るものよ

やが
ピューッてとんだらさ
あなぼこあくんじゃないの

開いちゃうかもしれないね

じゃあさ
あなぼこあいたら
いたいから
ぼくやぶさめいきたくない

矢の行き先を
母が言い忘れたので
矢は子どもの額だか胸だかに命中

川辺に降り立つ
五体のケンタウルス
神に操られていることを
知って誇らしげに
馬手で天に合図
弓手にはその名の由来
土煙あげ
背を伸ばし
鏑つがえ
よっぴいてひょうと放てば
那須の与一か
名人紀昌か
的は砕けて花と散る

至るところで花吹雪は舞った
射手の射た的は
ひとつだったのに
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