忘れ物/松本 卓也
ある日ひょっこりと
君から連絡があるかもしれない
そう思うと
携帯を家に置き忘れた事が
不安で堪らなくなる
そんな事ある訳ない
分かってるけど
胸ポケットに
願いを一つでも
入れておかないと
時間を経るごとに
がらんどうの中に
寂しさが詰っていく
たとえ急いで戻っても
君からの着信なんて
ないのに
昼休み
自転車を借りて
消し忘れていたクーラーのせいで
冷たいままの部屋に飛び込んで
ディスプレイを眺めたけれど
滲んだ汗が一筋
頬を伝って落ちていく
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