ベーゼンドルファー/藤原有絵
 
くすんだ空の下にいます
世界は町を隔てて
遠くの街に行く事を嫌がっているよう


聴こえたのです

いつかの日に
震える指で奏でられた
ベーゼンドルファーのピアノ


とっぷり注がれた夜の中にいます
世界は静かに眠って
遠くの街の鼓動が聞こえるよう


聴こえるのです

風の軌道に舞うように
メッセージのような
ベーゼンドルファーのピアノ


星の歓声
人差し指の拍手
ぺこりと頭を下げる
ささやかな挨拶


舞台を去る一瞬
振り向いた
柔らかな微笑


君の演奏

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