ウィルキンソンの雨が降る/朽木　裕
　
としとと。





奥深くから目覚める狂気のような。
（あぁ、恋愛とは狂気だ）


目眩のするような熱に。
（あぁ、堕ちていく）


蒸し暑い部屋は知らぬ間に白い波となる。
（無機質な、それは衣擦れの音がする）




「…溶けてしまう、」


太陽でないものにこの身を焼かれるなどとは考えもしなかった。


「は、やく」


存在を、乞う。
ただひたすらに求める体温。






サイレン、が、鳴るよ






まるで警鐘音のように感じられるのは
命を繋ぐ瞬間の、あのひりつく痛み。










ウィルキンソンの雨はただ静かに降り続く。

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