愛の註釈/七尾きよし
 
人を愛するとき
それまでことばにしようのなかった
あなたの中の大切なことが
はじめて
ことばになる

じぶん以外の何者かに
なれと言われながら
生きている人生のはざまに
人は恋をして

いちばん大切な感情を
決して誰も奪いとることのできない
あなたの中の大切な光を
はじめて ことばにしようとする

それは
新たな誕生
それまで生きていなかった
あなたの部分が生命を得て
生きはじめるということ

自分自身のことさえも
ろくに知らない人間という生き物は
感情というカタチで
自らを知る

愛をことばにするとき


戻る   Point(3)