愛の註釈/七尾きよし
人を愛するとき
それまでことばにしようのなかった
あなたの中の大切なことが
はじめて
ことばになる
じぶん以外の何者かに
なれと言われながら
生きている人生のはざまに
人は恋をして
いちばん大切な感情を
決して誰も奪いとることのできない
あなたの中の大切な光を
はじめて ことばにしようとする
それは
新たな誕生
それまで生きていなかった
あなたの部分が生命を得て
生きはじめるということ
自分自身のことさえも
ろくに知らない人間という生き物は
感情というカタチで
自らを知る
愛をことばにするとき
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