銀と響き/木立 悟
 



小指に触れる
時間と光
どちらかの声が
先に応える
骨と草の
はざまを伝う


失くしたほんとうがもどるとき
居たいところに居られるように
響きをひとつ残しておく
そこにはいないなにものかが
静かに静かに赦されるように


銀は銀に褪せていき
粗く風のない朝になる
幕はおりる途中で止まり
空はその身をかがめては行き交う


季節は終わらず はじまらず
空は空を追っては消える
くりかえすものたちからくりかえし離れ
いつとも言えない日々の手首に
生まれと分かれをはためかす


空地の草が
静かに草のままでいる
羽に見えるものはみな石で
音を呼吸しつづけている
はばたこうとするものを促し 制する
午後の重なりの群れがある


かたい茎を手折る音
土に触れては昇る水音
わずかに曇まで到かぬ音が
うたと菓子と飲みものと声
小指の先に笑むひとに降り
ともにともに響きあい
何もない豊かで小さな場所に
銀の波を打ち寄せる











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