真夜中の走者/杉菜 晃
吸ひ取つてしまへる巨大な
空隙を持つてゐる
彼らは大きくて強い 尊敬に値する
おれにはそれがない
だから走り続けなければならないんだ
朝日が顔を出しても
それが夕日になつても
依然走つてゐなければならない
そんなのはおれに限らない
周りにごろごろいる
ちやんとネクタイをして
毎日 家と会社を往復してゐたつて
彼らは走つてゐるんだ
夕日に向かつて
ひねもすマラソンをしてゐるんだ
そのうち力尽きて倒れるさ
夕日がおれを呼んでゐる
朝日まではもたないだらう
そんな気持ちで走つてゐるんだ
戻る 編 削 Point(4)