真夜中の走者/杉菜 晃
 

 吸ひ取つてしまへる巨大な
 空隙を持つてゐる
 彼らは大きくて強い 尊敬に値する

 おれにはそれがない
 だから走り続けなければならないんだ
 朝日が顔を出しても
 それが夕日になつても
 依然走つてゐなければならない
 そんなのはおれに限らない
 周りにごろごろいる
 ちやんとネクタイをして
 毎日 家と会社を往復してゐたつて
 彼らは走つてゐるんだ
 夕日に向かつて
 ひねもすマラソンをしてゐるんだ
 そのうち力尽きて倒れるさ
 夕日がおれを呼んでゐる
 朝日まではもたないだらう
 そんな気持ちで走つてゐるんだ
 

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