真夜中の走者/杉菜 晃
 
 このままの状態では
 生きていけないと思つたから
 突然おれは走り出した
 走ればどうにかなるといふものではない
 どうすればいいのか判らないから
 走り出したのだ
 人間の行為なんて
 所詮こんなものだ
 大方は方途もつかぬまま
 動き回つてゐる
 動いてでもゐなければ
 気が変になつてしまひさうだから
 動いて 動いて
 つひに走り出してしまふ

 それに気づいたから
 おれは走るのをよした
 馬鹿らしくなつたんだ
 そこで酒を飲んだ
 他にないぢやないか
 飲んでゐるうちに
 心臓がばくばくいひだして
 抑へが利かなくなつた
 これぢや走つてゐ
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