雨になった男/山崎 風雅
 
 
 しとしと降り止まぬ雨は
 誰からも忘れ去られた男の涙
 志なかばで倒れた男に身よりは無く
 愛する女性もいなかった

 そう遠くない昔の話
 今や誰もその男のことを知るものはいない
 墓もなければ参る者もいない

 哀しみは天に登り
 哀しみは雨になり
 時折雷雨となって
 僕達に知らせようとする

 歴史の中に埋没した男の話
 時の鐘は男のため息
 浮かばれぬ男は
 誰からの想いの届かぬ場所で
 ただ雨に変って
 僕達の上に降り注ぐ




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