病室/あやさめ
 
        (以後、音声なし)


彼は立ち続けることができないのですが
すわり続けていても腰や背中はよくならないでしょうか
陶器のコップは手にいいのでしょうか
本は目によくないのでしょうか

 ─採血の時間です。
  体温と血圧を測って待ちましょう。─

向こうの唸りと同等の苦しさを勝手に抱えています
メモ帳で隣の人が看護婦と会話しています
いつのまにか道具がパソコンに変わっても
望むようなことは大して変わらないでしょう


いつのまにか名前が書いてあるカードができて
その名前は次々とすり替えられていくその先に
皆の睡眠時間と昼寝の気分を奪っていく
この空気が流れていきます

遠心力で少しずつ
メトロノームが狂っていくように
忘れることを1つずつ思い出しながら
病室のベッドは足のない気分で日々ずれていくので

同じ明るさだけ提供しながら
少しずつ切り取られていくのです


空間を切り
その
メトロノームから

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