疼くのは/朽木 裕
癒えぬ傷跡、
それとも病月の劣情なのだろうか
白く飛んだポラロイド写真のような
明け方に私はきみの体温を求める。
ただ只管に。
低くて甘い声
あたたかい指先
触れれば輪郭はやわらかく
それは幸せなかたちを成しているのだ
そう幾度も思う
「ね、」
「なぁに?」
「キス、して」
「ん、」
淡々とそれは淡々と行なわれ
まるで田舎の葬儀のようだ
人は誰しもこうして生きている
「あ、雨降ってきた…やっぱりね」
「…どうせ雨男ですよ」
握る手にはなんの迷いもなく
握り返す手にはなんの不安もなく
盲目に
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