かわいい彼女が言うかわいいこと/逢坂桜
 
を覚えるのもいいな、て思ったの。
  自分で食べておいしいのもいいけど、
  あたしの料理であんなふうになってくれたら、もっといいな、て。
  だから、教えて?」
 「すききらい、ないよ。唯一のイイトコ」
 「それもうれしいけど、ちょっと違うの。
  あたしが作った料理をすきになってほしいから、
  まずは、あなたのすきな料理を覚えたいの」
  
  完敗です。
  こんなにかわいいことを言う彼女の料理は、誰にも渡しません。
  一人で全部、食べきってみせます。
  材料さえ、食べられるものを使えば、毒にはならないだろうし。

 「あたし、誰かのためになにかする、てすきじゃなかったの。
  自己中だし、不器用だし。
  でも、違うんだね。
  ふたりが幸せになれる、てあるんだね」
 「そっか」
 「うん。だから、なにか料理、教えて?」
 
 頭に浮かんだのは、簡単で失敗の少ない料理。
 おにぎりでした。

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