彼女は死んだ/たたたろろろろ
 
す。更に粉々に踏み潰す。口が利けなくなるまで踏み潰す。憎らしい笑顔がわからなくなるまで踏み潰す。足の裏から血が流れてきている。漂白剤が傷口に沁みる。激痛。俺は気にせずに台所を後にし、机の前に立ち、日記帳を開き一行書き入れる。激痛のため文字と顔が歪む。

『西村唯、好奇心に負けて漂白剤を大量に溜飲。殉職』

 俺はこれだけ書いて椅子に座り、痛みを紛らわすために『太陽にほえろ』の音楽(テュルトゥ〜、テュルトュ〜)を口笛で吹こうとするが、吹けない。俺は口笛が吹けないタイプの人間だった。グラスを踏んだほうの足の裏は、血まみれであった。

 破片を取り除こうと手をかけ、最初に摘まんだのはミッキーマウスの目の部分で、そいつは相変わらず俺の内面を見透かすような笑みを浮かべていた。








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