閉じゆく景色へのプロローグ/霜天
知らない雨が通り過ぎて
心音だけが聞こえる部屋に
やっぱり私は取り残されている、のかもしれない
何かが去って
その声が聞こえて
足音が混ざり合って
雨の
ぱたんぱたんと
庭に置き去りのバケツの辺りに
繰り返されている
あの日は
覚えているいくつかのこと
電話の音
何度も
あちらこちらへ慌しく
行き過ぎたこと
からっぽの人
とても空が、綺麗だったこと
帰ってくるのかもしれない
雨の日のたびに
ぱたんぱたん、と
帰ってこれる、のかもしれない
それから
沈んでいった海のこと
心音だけが聞こえる部屋に
始まっていく景色が見える
閉じゆく部屋の薄い明かり
そして
あの日と同じ雨がある
戻る 編 削 Point(6)