ポケットの中/海月
 
に隠している

ポケットを叩いてもビスケットは増えない
そんなことに気づいたのはいつだっけ?
物事を客観的に捉え始めたのはいつだっけ?

都内の安アパートの一人暮らし
部屋の中は散らかっている
それは出し忘れた生ゴミや雑誌じゃなくて
あの頃のに描けなかった
夢の形

同窓会で担任(はつこい)の先生(ひと)に言えるように
「僕は・・・」って伝えられるように
皆が夢を変えられるように
僕は僕でいなくても良い
そんな気がしたんだ

明日の舞台(どうそうかい)でちゃんと言えますように
僕は早めに眠りにつく
だけど、遠足や修学旅行の前の日のように
眠りにつけないんだ

何度も何度も持ち物を確認する
招待状とあの頃に持ってなかった夢の形
この二つでポケットはいつしか一杯になっていた

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