初夏の断層/たりぽん(大理 奔)
 
風をつかもうとして
草をちぎってしまった
てのひらが

鳥を呼ぼうとして
こんちくしょうと叫ぶ
声が

心のかたちを確かめたくて
君のからだを抱きしめた
腕が

今夜もずれている
昨日もそうだったろう
本当に欲しいものは
すり抜けていき
届くだけの世界で、

幾重にも重なった
地層のような
事実だけが押し固められ

不確かな雨上がりに
屈折して投影される
虹だけ、が
まぶしくて

つかもうとしても
暗雲が気になる夏空に
私が、
ずれていくのです



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