初夏/.
を引き取り
猫の彼女は
眼を覚ます
ハンバーガーより価値のあるものが
欲しいわ、と
身重の身体を少しだけ起こし
きっとお腹の赤ん坊は
可愛い眼をしていることだろう
酷い体臭が取れない彼は
顔をしわくちゃにしながら涙を流し
仕舞いには何で泣いているのかも
分からなくなって
子供が生まれたら
一緒にこの街を出ようと
彼女にプロポーズする
彼女は
急に何を言っているの
そう言いながら
笑いながら照れ隠しして
顔をしわくちゃにしながら涙を流して
そうしているうちに
街には
燕が飛び交っている
燕の彼女は
街路樹の下に転がり
掃除屋の男がそれを
片付けるだろう
燕はそれを見届ける為に
街路樹の上を飛び交う
とても若い燕
猫は
猫はおそらくその頃には
眠っている
新しい街の夢を見る
君は腕の中で眠っている
君とそう在りたいと
願っている
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