初夏/.
舗装された過ぎた道路は西に伸びる
隠された向日葵の種は
次はいつ芽吹けばよいのかと
首をかしげ
夏は立ち尽くしている
都会育ちの猫は
酷い体臭を払い除けながら
夜を寝床として
彼の恋人は
ハンバーガーの夢を見ている
都会育ちの猫は
新宿駅で燕の風切羽を手に入れ
街を出るときが来たと喜び
風が生暖かくて
もう夜も眠れない
街を出るときが来た
タクシーにやられた仲間を想い
二回、ニャア、と鳴いた
新宿駅の猫
テールランプがやけに紅くて
燕は自らの旅が終わることを喜び
衰弱する彼女を夫は抱いて寝た
とても若い燕
もうじき日付が替わる
燕は夫の腕の中で息を引
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