誰が主役なのか/狩心
 
根の上に乗せる
雷じいさんは雷の如く龍の姿と合い重なって濁流の中に消えていく
屋根の上にいたオバタリアンの世間話の力によって応急処置は施され
子供の口から競争社会と親子喧嘩と大量の水が吐き出され意識を取り戻どす
次の日が来るとつい昨日に大災害があったにも関わらず
子供達は何事も無かったかのように元気一杯で大ハシャギ
変わり果てた駄菓子屋の背景の前に群がりながらゲームのような世界に対して
「昨日のあのアドベンチャーは僕が主役だったんだ」と大声で叫ぶ
あの怒鳴り声は無くなったが子供達には誰が主役かなんて見当もつかない
昨日に溺れている子供達がそこに居るが昨日溺れた子はそこには居ない
昨日溺れた子はオバタリアンに自分の知らないストーリーを聞かされ
「僕が主役なんだ!」と叫んだ自分を蔑み蔑みこれ以上なく殺そうとする
体に残る全ての人の熱が自分の体温を36.5度に保っていると感受する
世界中にある蒸し暑い夏の日を背景にした舞台劇場のどこを探しても
もうその子の姿は見当たらないだろう
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