悲しいほほえみ/美味
 
わたしから一番遠い人だった
そんな単純な動機

想いは蓮の葉のように
水の面を漂うように
ゆらゆら揺れて

不確かな言葉と
不誠実なあなたと
忠実なわたし

ほほえみをたたえる写し鏡
夏に二人で行った海でのこと
あの時あったいくつかの過ちは
きっと
何もかもが初めてだった所為

時計の針が戻らないのも
身体が重力に逆らえないのも
わたしが夢を見ていたことも
風が季節を溶かしていくくらい自然なこと

最後に与えられた記憶は
あなたに似つかわしくない
悲しいほほえみ



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