森の序章??デッサン/
前田ふむふむ
は、森の呼吸が、はきだしたテラスで、
わたしに微笑み返して、
熱き純真の薫りをこめた、青い夏の印象を、
よわい掌に沈む、中原中也詩集に、
燃えたたせる。
季節が芳しく衣擦れる午前の歩み。
あなたの美しく脱いでゆく多感な時間の針は、
涼しい花篭のなかではえる黄色い百合を
うつむく黒髪に映し込んでいる。
揺れる恋人の声が、爽やかに立ち昇る――、
しなやかな森のみずが、
ひとたびだけ流れる深まりのなかで。
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