雲を売る話/ZUZU
河原で雲を売ることにした
商売は一にもニにも場所だよと
商売などやったことのない親父が
いつも言っていた
場所は悪くない
多摩川は人気の多いところも少ないところも
選べるし
ぼくはどっちかというと
人ごみが苦手なのだ
人がどうしてこんなにいるのだろう
だまっていても増えるものではないから
どれかとどれかで
人をつくってしまっているわけだ
余計なことをする
生産的なことは一切悪だと
生産的なことなどやったことのない親父が
いつも言っていた
非生産的に生きよ
勤勉を憎め
朝から晩まで怠けなさい
だがそれは本当の親父ではなかった
キタロウの親父が
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