声 めぐる 声/木立 悟
 


雨から雨へ
飛びつづける声
かすかにまだらに色褪せながら
遠く遠く張られる弦に
願いのようにふるえ伝わる


にじみ ひろがり
蒼く猛り
たわみ ゆがみ
灰にさざめき
ひかり放つ
ひかり放つ声


曇に残る指跡を
目を閉じたまま見つめるもの
花のかたちに熱い手のひら
旧い響きの夜風にさらす


蛾の群れよりも低く飛ぶ霧
押されたままの夜のかたち
声の紋は楕円に横ぎり
しとどにしとどに唱う灯の列
朝に消え去るものたちの列


よどみの涙が響きと昇り
重なる星座に曇をかき分け
見つめるもののからだは照らされ
手にしたひとつの楽器とともに
小さな誓いに満たされてゆく










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