私には触れられない/明日葉
私の辺りはぼやけて霞んでうつろ
どろり
と冷たい濃い乳白色の霧に
まるで
胎児のようにつつまれてる
この耳に聴こえるのは
高い空から降ってくる微かなおと
どちらも在るのに触れられない
なら此れは本当に在るもの?
両の足先は しめった土塊を掴み
煙る木々
もあおい池もみな幻想と
さめきった頭はすべて分かってる
高く高くと私を呼ぶ声も
遠く吹く口笛と共に消えゆく幻想
だって此れも触れられない
どれも此れも本当に在るもの
清いからだに疑うこころは要らぬ
足は
汚れた土から離れたけれど
手を
伸ばしてもがいても空をかく
いまだけは信じるから
あさはかな試みは見透かさてれ
だってもう綺麗じゃない
私には触れられないの?
まだ
空と土の間でさまよってる私の
醜く
そまったこころを風がけずりとる
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