ずみ/紫翠
ずみの花が咲いた
夜にかくれて ひとつ、またひとつと
ふくらんでは夢のようにひらく優しい花よ
ずみの花が光る
風を香らせ たわわに揺れる
蜜蜂達が 遊ぶ梢に
私も腕を拡げて 飛びたいの
ああ、花弁(かべん)に滲んだ薄紅(うすくれない)は
煌々(きらきら)と陽に射しぬかれ 昇華するのか
散る 散る
純白の涙になって
我差し招く 静(しずか)の森
今ひとときの 響(ひびき)の森
春蝉がひとつふたつと 死にゆく土に
ひとつ、ふたつと生まれる土に
溶け しみてゆく ずみの涙
戻る 編 削 Point(3)