いのちのいる場所/前田ふむふむ
 
遠ざかる青いカンパスの咆哮が、
夜の鋭い視線に切り裂かれて、
街は、暗闇の静脈を流れるひかりのなかで、
厳かに再生されてゆく。
落下し続ける星座の森が、映し出されている、
高層ビルの滑らかな皮膚――
月を抱きかかえて、
煌びやかな滴る音で満たされている。
書き込まれる痩せた川面――
揺れながら冷たい都会の劫火が浮かび上がり、
街の瞳孔がときめいている。

目隠しをした盲目の空に、
高々と響く高速道路の剥き出しになった唸り声。
海を晒している月が粉々に鋏をいれた
走行するライトの先端が閃光する厳粛さ。
乾いた都会が滑りながら塗されてゆく。
その片隅の誰もいない公園で
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