バイキンの誕生日/壺内モモ子
上履きを隠され
体操服をゴミ箱に捨てられ
授業中は、後ろの席のやつらに消しゴムを当てられた
小学校5年生のバイキンは
泣いているのか笑っているのかわからない
ふにゃふにゃで、げっそりした顔で
男子たちにこう言った
「今日は私の誕生日なの」
バイキンの精一杯の言葉だった
なのに
どこからかバイキンに向かって黒板消しが飛んできた
「やめて」と言えばいいのに
「誕生日プレゼントありがとう」
とか言うからいじめられるんだよ
小学校5年生の俺らに
そんなドラマみたいな台詞言われても
ギャグにしか聞こえないって
ごめんな、ばかで
バイキンは泣いていた
ほっぺにきらりとするものが
バイキンの汚れた体を綺麗にしていくような気がして
もともとバイキンはバイキンじゃないのに
どこにでもいる普通の女子なのに
周りにいるやつらがバイキンなだけなんだ
胸がちくちく痛んだ放課後の教室
「おめでとう」と言えなかった
バイキンの誕生日
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