地霊/岡部淳太郎
 
ふうふうと
息をのぼらせ
この坂道をのぼってゆく
季節は溶解し
逆転し
暗転し
眠るものの肌を焦がした
ふうふうと
息をのぼらせれば
ふうふうと
あえぐ空 または地

(私はあなたが来る前からここにいた)

思い描いてきた
龍の鎖骨と髭
落ちてきた鱗は宝石となって
静かにこの地にとけこんできた


  左手にヤビツ峠が見える。名古木(ながぬき)。三廻部(みくるべ)。
  少し離れれば寄。(やどりき)この近辺には奇妙な地名が
  多すぎる。地は無数の山に囲まれ、息を失っ
  てしまいそうだ。かつて弘法大師空海が訪れ
  たという伝説が
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