霧のある風景/みずほ太陽
僕は水滴の海の中にいるらしい
あれからずいぶんと辺りに溜まりだして
毎朝、水没していく海岸線を眺めている
君を思い出す時、それは決まって朝で
想い出の中の君も、それは決まって霧の中ではじまる
僕らはとんでもない所まできてしまった
でも霧の中の君はいつも子供で
端の切れた野球帽をかぶっている
子供の頃、
僕が木によじ登って鋼鉄の葉をむしりとると
木の枝に朝露が張り付いていて
数億粒の水滴たちが木の根の君へと降り注いだ
君はそれをじいっと見つめているだけで
僕は雷雨に打たれる君を見て僕は
君のことを忘れなくなった
僕がある朝、
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