蛍/
銀猫
湿った闇に蛍ちかり
潤んだ夜に星ひかり
小指から糸を辿れば
丁度きみの背のあたり
絡んだ赤が花になる
夏は夜
浴衣を着れば良かったと
木綿のシャツを少し恨んでみる
盆の踊りの人混みは
俯くわたしに
苦い水が忍び込む
思い出と呼ぶには
まだ痛み
きみの履いていたサンダルを
覚えている
わたしまだ夏
アセチレンの光眩しく
背を眺むわたしは
ただ夢の綿菓子をはむ
白い爪先なお白く
蛍ちかり 星ひかり
岐れ道を照らしてる
わたし
まだあの夏にいる
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