かぐわしき/.
かたく閉じた両耳が震えた
ぐらつくほど景色は紅く燃え
わたし舟、かすかに揺れた気がして
しばらくこのままでありたいと
きえゆく視界に願った
なまえには最初から意味なんてないんだろう
つじつま合わせで笑うのが巧くなった
のり遅れた船が消えてゆく
ひが射し込んだ砂の城
ざしきに寝転がる猫は故郷の夢を見ている
したくが済んだあなたがドアを開ける
かしこい嘘さえ吐けずに
わりきれない計算ばかり
いつもより少し広いソファー
ただわめくだけのテレビ
はち月はそこまで来ている
なまえの意味は私にはまだない
がい灯が踊る街にそんな者は居ない
ゆうぐれの渡し舟は戻らない
れつを成す亡霊達
るり色の影
『芳しき夏の日差し、乾いた花が揺れる』
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