月下美人/蛙の子
 
今晩も私のご主人様がお話してくれます。

会社で何があったとか、友達がどうだったとか。

私はご主人様の話を聞くのが大好きです。

ご主人様が何を想い、何を感じてこられたか

ご主人様と常に傍に居れない私の

ご主人様を知る、唯一の手段ですから。

けれども、たまにご主人様は私に何も告げず

ひっそりと泣いていらっしゃいます。

あぁ

私がこの体を動かせるのなら

ご主人様の傍にいてあげられるのに。

あぁ

私が言葉を話せるのなら

ご主人様の言葉に相槌をうってあげられるのに。

あぁ

誰よりもご主人様を想っていることを

伝えたいのに。

私は何も出来ない「月下美人」

今晩も ただ 美しく咲くのみ。

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