Sirens ☆/atsuchan69
 
ただひとり 生き延びた僕に、
残された海。
激しく、荒れ狂った夜は 引き潮に連れ去られ、
空と海とをわかつべく 曖昧な区切りは
さも穏やかに微笑んでいる。

磯際を覗くと、ウミスズメたちが 餓えたように
黒いかたまりとなって漂い 泳いでいた。
足元には 濃い紫をおびた滴型の貽貝や円錐状の甲殻類、
また、石牡丹の仲間である 濡れた紅赤の唇たちが
潮をふき、群がり棲んでいた。

まるで上質の結晶を散りばめた
豪華なジュエリーを想起させる 波の面に
反射するのは、うつくしく研磨された 
痛みすら伴う ひかり。

 水のゆらぎに移ろいながら 生まれては消え、
 まぶしく
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