風のなかの松明/atsuchan69
戦陣の背後に黒い山脈が 影絵のように拡がっていた。
狼煙のけむる夜、
恐れよりも闘うことの歓びに身体が震えている。
「死と生の戦い 」
生きのびても、
ただ死ぬまでつづく日々が残るのみ。
つかの間の闇が松明に照らされ、ゆれていた。
風のなかの松明
それが私だ。
馬のひづめの大地をはげしく蹴る音、角笛のひびき。
行かなければ、
人を殺しに
刀を振り、
槍を突き、
弓を射る!
敵はもうひとりの私。
殺しても殺されても私はそのどちらかだ。
目的は勝利ではない。
善も悪も定かではない。
殺し合いが眼の前にあり、
私は今ここにいる。
生きのびたいのではなく、
たとえ死を迎えたとしても
そのときまで
私はつよく、生きよう。
ただふるさとの君よ
どうか私を想っていてくれ。
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