秘密/佐々宝砂
 
いまはまだ
冬の秘密を伏せておこう

ねっとり黄金の蜂蜜を練りこんで
ぴかぴかの春がやってくる

舌先で感じる原初の味覚は
甘味なのだから
わたしは拒まない

とろりながれる黄金の蜂蜜の
わずかな酸味が
舌を刺すとしても

消える夢ではない
はかなく溶ける幻ではない
もっとずっと
強固な

先端に感じる
この確かな甘味を
甘ったるいと切り捨てるなら
あなたは愚かだ

春がくる
ぴかぴかの春がくる
新しい春がくる
春を拒むな
春はいつだって甘いのだ



いまはまだ
夏の秘密も伏せておこう
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