労働者の哀歌-仙台編-/松本 卓也
 
レモン果汁のチューハイを
ちびちびとやりながら
溜息をつくのはもはや日課だ

鏡に映る容貌はどうみても
二十代後半には見えないほど
未来を思うには老けていて
過去を振り返るには青臭い

いつも過ごしていた時間より
ほんの少しだけ賑やかな街と
身震いを思い出す寒さが覆って
明日訪れる土地へと馳せる思い

そこに待つ者はいない
果たすのは契約の履行だけ
名刺に記された肩書きが重要で
僕という人格などおまけでしかなく

歩いてきた道すがら
拾い集めてきた小石だけが
今日を生きている証だった
そんな悪い冗談は聞きたくない

明日は早いけどもう少しだけ
今日の意味を問い続けさせて
きっとそれすらも忘れた頃に
いつもより眩しい朝日を拝めるのだから


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